日本サイコオンコロジー学会|JPOS

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サイコオンコロジーの実際
Clinical practice

がん医療の現場で、サイコオンコロジーの専門家が入ることで解決した典型的な事例を紹介します。

こンサルティングの流れ

コンサルティングの流れ①コンサルティングの流れ②
こンサルティングの流れ③コンサルティングの流れ④

CASE01認知症であっても、残存する認知機能を生かし、抗がん治療を受けることができた患者
CASE02点滴自己抜去には理由のあったせん妄患者
CASE03治療意思決定能力が問われた軽度認知症患者
CASE04抗うつ治療で抗がん治療が再開できた患者
CASE05包括的評価が大切とあらためて認識した不眠患者
CASE06乳がん患者の夫からの相談(「どう患者に接したらいいのか」)
CASE07病室の外の椅子で一日中泣いている、夫を看とる配偶者
CASE08非現実的な希望をいう患者(心理的防衛反応(否認))
CASE09実はせん妄だった不安の強い終末期がん患者
CASE10カウンセリング(心理療法)により不安を軽減した乳がん患者

CASE01認知症であっても、残存する認知機能を生かし、抗がん治療を受けることができた患者
73歳女性、咽頭部がん。元気な頃は毎日写経をされていた。
抗がん治療のため入院するも、他人の病室に入るなどの行動があった。
サイコオンコロジーの専門家への依頼
家族からの情報収集などにより認知症の診断のもと、MMSEやCOGNISTATやN式精神機能検査などで、記憶・見当識・実行機能・空間認知 等、多種多様のある認知機能レベルを評価した。
本患者は、空間認知機能が極端に低下し、読字書字の機能が保たれていることが判明。 空間認知補助のためトイレの出口などにビニールテープで病室への矢印を作り、また、保たれている読字書字の機能を生かし、その日のスケジュールを毎朝伝え、それを自ら書いていただいた。
その後も、患者に対する対応方法を病棟スタッフと共有することにより、抗がん治療を完遂することができた。
CASE02点滴自己抜去には理由のあったせん妄患者
67歳男性、毎晩のように点滴の自己抜去を繰り返していた。
サイコオンコロジーの専門家への依頼
米国精神医学会診断基準(DSM)によるせん妄の診断とともに、血液チェックを行いせん妄の原因を探った。
また、患者によくよく尋ねると、幻視のため点滴ルートがヘビに見えるとのことであった。
患者は、点滴ルートがヘビに見えて恐怖に感じ点滴を自己抜去していると考え、点滴ルートを患者からできるだけ見えない位置に工夫するよう看護師に対して助言をするとともに、せん妄の原因である高カルシウム血症の補正を推奨した。
その日の夜からせん妄による活動性は低下した。そして、高カルシウム血症の補正により今後せん妄が改善することを期待した。
CASE03治療意思決定能力が問われた軽度認知症患者
73歳男性、改善の見込みのある抗がん治療を拒否する軽度認知症患者
サイコオンコロジーの専門家への依頼
認知機能評価を行うとともに、MacCAT-T(N Eng J Med,1988)を参考に治療意思決定能力を評価を行った。
軽度認知機能低下は伴うものの、4つの条件(選択の表明、理解、認識、論理的思考)を満たし治療意思決定能力はあると判断した。
治療意思決定能力について、根拠(心理社会的背景やMacCAT-Tの結果)とともに主治医に伝えた。
主治医は、抗がん剤治療を行うメリット・デメリット及び、治療意思決定能力などを総合的に判断し、本人の意思を尊重することとした。
CASE04抗うつ治療で抗がん治療が再開できた患者
43歳女性、乳がんのためタモキシフェンの内服をしていた。
2ヶ月前から外来で、泣いてばかりでタモキシフェンの内服も拒否するようになった。
サイコオンコロジーの専門家への依頼
米国精神医学会診断基準(DSM)でうつ病の診断基準を満たし、抗うつ剤が必要である旨を主治医に伝えた。
主治医より、抗うつ剤の選択について質問があったため、
「薬物の使用法については、国際的にコンセンサスの得られたものは存在しない。しかし、タモキシフェンとパロキセチンはCYP2D6阻害作用でタモキシフェンの効果が減弱し、乳がん死亡率の増加と関連する報告があることから、パロキセチンは避けた方がよいこと」を伝えた。
2週間後ぐらいから患者は元気を取り戻し、タモキシフェンの内服を続けることができた。
CASE05包括的評価が大切とあらためて認識した不眠患者
65歳男性、膵臓がん。5日前にがんの告知をされた後から不眠がちとなり、睡眠剤を処方したが改善しなかった。
主治医は、「告知した後だから眠れないのは当然だけど・・・・」と思いながらも、眠剤の調整に難渋していた。
サイコオンコロジーの専門家への依頼
依頼を受けたサイコオンコロジストは、包括的評価シート(CAS)を用いて、身体症状→精神症状→社会的問題→心理的問題→実存的問題の順番に評価していった。
そうすると、告知によるショックだけでなく、腹痛の症状や家族背景など様々な問題が重なり不眠に陥っていることが判明した。
経済的な問題など、多職種で介入を行い、患者は数日後には不眠の軽減を認めた。
CASE06乳がん患者の夫からの相談(「どう患者に接したらいいのか」)
48歳女性の乳がん患者と一緒に同席する配偶者が抑うつ気味とのことで主治医から連絡があった。
サイコオンコロジーの専門家への依頼
配偶者に対して、うつ病を否定したのち心理面接を行うと、予期悲嘆と家族の歴史に問題があり、そして配偶者から「どうがんの妻に接したらよいか分からない」との訴えがあった。
カウンセリングを継続するとともに、ホームページ(『妻が乳がんと言われたら』で検索)の紹介を行った。
1ヶ月後、配偶者は患者とともに笑顔で来院された。
CASE07病室の外の椅子で一日中泣いている、夫
55歳女性、肺がんで予後数日と思われる男性の配偶者が病室の外の椅子で一日中泣いており、心配に思った主治医から連絡があった。
サイコオンコロジーの専門家への依頼
配偶者に対して、うつ病を否定したのち、共に患者に寄り添いながら患者とのライフレビューを行い支持的精神療法を続けた。
患者が退院される際に、配偶者に対してホームページ(『これからのとき(悲嘆の小冊子)』で検索)の紹介を行った。
49日を過ぎた頃に、その配偶者が来院し挨拶に来た。配偶者に対し、多くの方がたどるこころと体の変化について話し、気持ちの落ち込みが続く時は来院するよう伝え、その配偶者は笑顔で帰った。
CASE08非現実的な希望をいう患者(心理的防衛反応(否認))
56歳男性、1週間前に胃がんであることを伝えられた患者。
主治医より「理解力が乏しいのか不安が強いのか、病状の説明をしても分かってもらえず、できそうもないことばかり言う患者がいる。認知機能評価をしてもらえないだろうか」と連絡があった。
サイコオンコロジーの専門家への依頼
その患者に対し、
Mini-Mental State Examination(MMSE)(J Psychiat Res,1975)
The denial in cancer interview(DCI)(Patient Educ Couns,2007)
などを参考にするとともに、自らの説明を受けた病状について尋ねた。
心理的防衛反応としての否認の状態であると判断し、対処法など主治医に伝えた。
現在、継続してサイコオンコロジーの専門家が関わりながら、抗がん治療を受けている。
CASE09実はせん妄だった不安の強い終末期がん患者
27歳男性、胃がんの腹膜播種及び肝転移で予後1ヶ月以内と思われる患者。夜間中心にナースコールが頻回で、主治医より「若年がん患者で不安が強く、エチゾラムを処方してもよくならない」とのことで連絡があった。
サイコオンコロジーの専門家への依頼
会話可能であったが、軽度意識障害(しばらく話していると気づく程度)を認め、主治医に伝えた。主治医より血液再検査を行い高アンモニア血症を認めた。
夜間中心の頻回のナースコールは、高アンモニア血症によるせん妄症状と判断した。
そして、夜間はエチゾラムではなくハロペリドールの内服を勧めた。
その夜から、患者の落ち着いて過ごす時間が増えた。
CASE10カウンセリング(心理療法)により不安を軽減した乳がん患者
46歳女性、がん検診にて乳がんがみつかり、手術と術後補助化学療法を受ける。今後の治療方針を決める際に不安が強く、意思決定のための主治医との話し合いが困難であった。
サイコオンコロジーの専門家への依頼
アセスメントの結果、抑うつ・不安のスコアが高いが、薬物療法の適応の問題ではなかったため心理療法の適応と判断し、チームの心理士が認知行動療法(問題解決療法)の実施を検討。
病気と治療の見通し以外に、家族内の人間関係の問題が大きなストレスとなっていることが判明し、家族とのコミュニケーションの取り方ついて話し合いを行い、具体的な行動を計画し宿題として実行した。
家族全体の人間関係が良好となり、不安が低減した。
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