心理職の教育・研修
心理職の教育・研修
1. 心理士教育カリキュラム
1-1. 策定の背景
2010年に施行されたがん診療連携拠点病院整備に関する指針において、「緩和ケアチームに協力する薬剤師及び医療心理に携わる者をそれぞれ1人以上配置することが望ましい」ということが明記されました。また2012年には、「専門的な緩和ケアの質の向上のため、拠点病院を中心に、精神腫瘍医をはじめ、がん看護の専門看護師・認定看護師、社会福祉士、臨床心理士等の適正配置を図り、緩和ケアチームや緩和ケア外来の診療機能の向上を図る」ということが、がん対策基本計画に盛り込まれました。このように近年、我が国のがん医療において、心理士を導入する動きが進んできています。
ところで、同じく2012年に策定されたがん対策基本計画において、「学会などと連携し、精神心理的苦痛に対するケアを推進するため、精神腫瘍医や臨床心理士等の心のケアを専門的に行う医療従事者の育成に取り組む」ことが、取り組むべき施策として取り上げられました。かねてよりがん医療に携わる心理士を対象とした教育研修を継続してきた日本サイコオンコロジー学会では、今後さらに、その体制を整備していくことを考えています。
1-2. 教育カリキュラムの策定過程
このような背景をふまえ、日本サイコオンコロジー学会の心理士資格検討委員会では、心理士ががん医療における臨床業務を行なう上で必要なスキルを明確化し、教育目標およびカリキュラムを開発することを目的としたフォーカスグループを実施しました(2012.3.31)。がん医療に関する経験・知識のある心理士、精神科医、心療内科医が集まり、表1の手順で検討を行いました。
その結果、心理士ががん医療における臨床業務を行なう上で必要なスキルとして、7つのコアスキルが抽出されました(図1)。
1-3. 教育カリキュラムの内容
日本サイコオンコロジー学会の心理士向け教育カリキュラムでは、この7つのコアスキルを習得し、最終的に「専門家として現場で責任をもって仕事ができる」心理士を育成することを目標としています。7つのコアスキルの詳細は表2をご参照ください。
2. 心理士向け研修会体制
日本サイコオンコロジー学会の心理士向け研修会は、この7つのコアスキルをカバーするように、対象と目的の異なる、3つのコースから構成されています(図2)。
2021年からは、3つのコースで習得した7つのコアスキルを基礎として、効果的に活動するためのスキルと態度の研鑽を目指した、「修了者コース」が新設されて、4つのコース構成になります(図3)。
2-1. スタンダードコース
「スタンダードコース」は、がん医療に関心のある心理士を対象に、2007年から開催しています。初学者を含む幅広い層の心理士を対象としたこのコースでは、がん医療やサイコオンコロジーに関する基礎的な知識や技能を獲得することを目標にしています。特に、医療現場で働くための基礎知識や精神心理的なアセスメントについて講義で学んだり、グループワークを通して互いの経験を共有したりする場となっています。過去の研修で扱ったテーマについては、表3をご参照ください。
なお、毎年異なる内容で企画・開催しますので、一度受講された方や、アドバンスⅠ・Ⅱを修了された方でも、繰り返し受講できます。
2-2. アドバンスコース I
2013年に新たに始まった「アドバンスコース I」は、実際にがん医療に携わる心理士を対象として開催されています。このコースでは、さらに高度なスキルとして、他職種との情報共有や、実際の心理介入に焦点を当てています。グループワークなどを通して、日頃がん医療の臨床現場で活動する際に求められる知識や技術を習得することを目標としています。
なお、アドバンスコース Iを受講するためには、スタンダードコースを修了していることと、がん領域を含む心理臨床経験が1年以上あることが必要であり、受講は原則的に1回のみとなっています。
2-3. アドバンスコース II
2014年からはさらに「アドバンスコースⅡ」を開催しています。このコースでは、がん医療における心理士の役割を明確にし、他職種に説明して理解を得ていくために、心理活動の計画立案や、広報活動に関するスキルを習得することを目的としています。「アドバンスコースⅡ」まで修了されると、がん医療で心理士として活動するために必要な基本的な知識や技能を網羅的に習得できるよう、プログラムがつくられています。
なお、アドバンスコースⅡを受講するためには、アドバンスコース Iを修了していることと、がん領域を含む心理臨床経験が1年以上あることが必要であり、受講は原則的に1回のみとなっています。
2-4. 修了者コース
2021年からアドバンスコースⅡの修了者を対象とした「修了者コース」を開催します。アドバンスコース IIまでに習得した7つのコアスキルを基盤として心理士が効果的に活動できるように、さらなる技能と態度の習得を目指したコースです。
修了者コース受講するためには、アドバンスコース Ⅱを修了していることと、がん領域を含む心理臨床経験が1年以上あることが必要です。毎回異なる内容で企画・開催されて、繰り返し受講できます。
3. 心理士向け研修会の実績
2007年から始まったスタンダードコースでは、2024年6月現在、のべ1,283名の方が修了されています(図4)。
また2013年から始まったアドバンスコースⅠは243名(図5)、2014年から始まったアドバンスコースⅡは152名の方が修了されています(図6)。
図4 スタンダードコース年別及び累計のべ受講者数(07-24年)
図5 アドバンスコースI年別及び累計受講者数(13-24年)
図6 アドバンスコースⅡ年別及び累計受講者数(14-23年)
4. アドバンスコースII修了者
アドバンスコースⅡを修了された方のうち、ホームページへの掲載意思を確認した当学会会員95名は表4のとおりです(五十音順)。所属は本人から申し出があったものを除き修了時のものです。
表4. アドバンスコースⅡ修了者(五十音順)
氏名 | 所属 |
相田貴子 | 洛和会音羽病院 がん相談センター |
芥川 亘 | 独立行政法人 国立病院機構 岩国医療センター |
浅井真理子 | 帝京平成大学 |
石田栄美子 | 厚生労働省 東海北陸厚生局 |
石田真弓 | 埼玉医科大学 国際医療センター |
石橋直子 | 筑波メディカルセンター病院 |
板垣佳苗 | 群馬県立がんセンター 精神腫瘍科・がん相談支援センター |
一美奈緒子 | 熊本大学病院 |
伊藤嘉規 | 名古屋市立大学病院 |
稲垣理佐子 | 独立行政法人国立病院機構 横浜医療センター 精神科・心療内科 |
井上美穂 | 四国がんセンター |
石井あかね | 高崎総合医療センター |
市倉加奈子 | 東京医科歯科大学 |
岩田尚大 | 広島大学病院 |
岩淵智恵美 | 陽和病院 |
岩滿優美 | 北里大学附属臨床心理相談センター |
植松静香 | 群馬県立がんセンター 精神腫瘍科・がん相談支援センター |
梅田佳枝 | 稲沢市民病院 |
大庭 章 | 医療法人赤城会 三枚橋病院 |
大盛久史 | JA北海道厚生連 旭川厚生病院 |
岡崎賀美 | 社会医療法人財団大和会 東大和病院 |
岡本 恵 | 京都第一赤十字病院 精神科(心療内科)・緩和ケア内科 |
小笠原亜子 | 岐阜厚生連 久美愛厚生病院 |
小川万希子 | 耳原総合病院 |
梶原都香紗 | 近畿大学病院心療内科 |
片桐直子 | |
加藤真樹子 | 大分県厚生連鶴見病院 |
加藤美玲 | 徳島市民病院 |
門田 芳 | 群馬県立がんセンター 精神腫瘍科・がん相談支援センター |
鏑木新菜 | 済生会神奈川県病院 |
茅野綾子 | 京都府立医科大学 疼痛・緩和医療学教室 |
川畑貴子 | 千葉県がんセンター 精神腫瘍科 |
川村 舞 | 札幌医科大学附属病院 |
城戸京香 | 群馬県立がんセンター |
公文 彩 | |
小池委子 | JA愛知厚生連安城更生病院 |
小池眞規子 | 目白大学 |
小島菜々子 | 名古屋市立大学病院 緩和ケア部 |
小杉孝子 | 国立病院機構 近畿中央胸部疾患センター 支持・緩和療法チーム |
小辻希世子 | 浅香山病院 |
近藤陽子 | JA北海道厚生連 札幌厚生病院 |
坂田尚子 | 東京大学医学部附属病院 緩和ケア診療部 |
酒見惇子 | 神戸大学医学部附属病院 |
坂本雅幸 | 株式会社日立製作所 ひたちなか総合病院 |
佐藤裕子 | 山口大学医学部付属病院緩和ケアセンター |
塩崎千愛 | 愛媛県立中央病院 |
清水智子 | 社会医療法人愛生会 総合上飯田第一病院 緩和ケアチーム |
田 佳潤 | |
杉谷麻里 | 日本赤十字社医療センター |
杉山あけみ | 名古屋記念病院 |
鈴木敏城 | 臨床哲学・臨床心理学サポートシステム |
鈴木康弘 | 埼玉石心会病院 |
副島沙彩 | 国立がん研究センター東病院 精神腫瘍科 |
高橋香織 | NTT東日本関東病院 |
高橋可奈子 | 地方独立行政法人京都市立病院機構 京都市立病院 |
高橋恵子 | みやぎ県南中核病院 |
髙橋美智子 | 社会医療法人弘道会 なにわ生野病院 |
髙場ちひろ | 群馬県立がんセンター 精神腫瘍科・がん相談支援センター |
高野公輔 | 済生会横浜市東部病院 |
髙山由樹 | 社会医療法人同心会 古賀総合病院 |
田口真由美 | 大阪大学医学部附属病院 |
武村尊生 | がん・感染症センター 都立駒込病院 神経科 |
多田万恵 | 宮城県立がんセンター がん相談支援センター |
舘野一宏 | 独立行政法人 国立病院機構 広島西医療センター |
舘野由美子 | 国家公務員共済組合連合会虎の門病院 |
田村三太 | 一般社団法人MHCリサーチ&コンサルティング |
千葉浩太郎 | 石巻赤十字病院 医療技術部 臨床心理課 |
千葉ちよ | 独立行政法人国立病院機構東京医療センター |
張 薫化 | 市立伊丹病院 |
塚野佳世子 | 横浜労災病院心療内科 |
堂谷知香子 | 東京大学医学部附属病院 小児科 |
永田和代 | 熊本地域医療センター |
永田裕子 | 熊本赤十字病院 |
中西詩乃 | 岐阜県立多治見病院 |
中村妙子 | |
中山菜央 | 東京医科歯科大学医学部附属病院 |
成田 学 | KKR札幌医療センター |
縄井一美 | 相模原協同病院 |
西内俊朗 | 川口市立医療センター 総合相談室・がん相談支援センター |
二宮ひとみ | 国立がん研究センター中央病院 |
祢津晶子 | 聖路加国際病院 |
花村温子 | 埼玉メディカルセンター |
原田 彩 | |
日吉円順 | 川口市立医療センター緩和ケアチーム/まどかプロジェクト |
平井 啓 | 大阪大学/市立岸和田市民病院 |
廣瀬寧子 | 熊本大学医学部附属病院 緩和ケアセンター |
福榮みか | 横浜市立みなと赤十字病院 精神科(心理) |
藤松義人 | 鳥取県立中央病院 がん相談支援センター |
藤原美聡 | 独立行政法人 国立病院機構 広島西医療センター |
福島典子 | 独立行政法人佐賀県医療センター好生館 |
福森崇貴 | 徳島大学大学院総合科学研究部 |
古谷 浩 | |
増田紗弓 | |
松田瑞穂 | 株式会社日立製作所 日立総合病院 |
円山拓子 | 北海道医療センター |
丸山 睦 | 栃木県立がんセンター 統括技術部 臨床心理科 |
三木有希 | 名古屋市立大学病院 |
水田晋誠 | 高知赤十字病院 |
水野将樹 | 済生会横浜市東部病院 |
宮﨑厚子 | 徳島大学病院がん診療連携センター |
宮崎美佐 | 北播磨総合医療センター |
村上理菜 | 国立がん研究センター東病院 |
目加田敏浩 | 栃木県済生会宇都宮病院 |
柳井優子 | 国立がん研究センター中央病院 |
簗場久美子 | 千葉大学医学部附属病院 緩和ケアセンター |
山下 礼 | 東京医科歯科大学医学部附属病院 |
山本 舞 | 砂川市立病院 |
吉田沙蘭 | 東北大学大学院(教育学研究科) |
若林暁子 | 大阪医科大学附属病院 精神神経科 |
鷲塚浩二 | 東邦大学医療センター大森病院 |
渡辺詩織 | |
渡邉裕美 | 大崎市民病院 精神科 |
和田 泉 | 東邦大学医療センター大森病院 |