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がんサバイバーの介護者の再発不安ががん検診受診行動を促進する効果検証
Fear of Cancer Recurrence Promotes Cancer Screening Behaviors Among Family Caregivers of Cancer Survivors
Takeuchi, E., Kim, Y., Shaffer, K.M., Cannady, R.S. and Carver, C.S. (2020), Fear of cancer recurrence promotes cancer screening behaviors among family caregivers of cancer survivors. Cancer, 126: 1784-1792. doi:10.1002/cncr.32701
国立がん研究センター
竹内恵美
【背景】
がんサバイバーにおいて再発不安はがん検診受診行動に関連があることが示されている。しかし、著者の知る限りでは、がん患者の介護者におけるその関連は明らかになっていない。本研究では、介護者が抱える、がん患者が再発するかもしれないという不安がその後のがん検診受診行動を予測するかについて明らかにする。
【方法】
American Cancer Societyに登録されるがん患者の介護者に対して調査を実施した。813名(うち、女性67%、平均年齢56歳、白人92%)の介護者が、患者のがんの診断2年後(T1)、8年後(T2)に調査票に回答した。再発不安、不安(Profile of Mood States-Short Form [POMS-SF])、全般的な精神状態(Medical Outcomes Study 36-Item Short-Form Health Survey [MOS SF-36])をT1で評価し、大腸がん、乳がん、前立腺がんのがん検診受診行動をT2で評価した。
【結果】
がん検診の受診率は全国平均と同等であった。共変量を調整し、各がん種の検診受診の有無について階層的ロジスティック回帰分析を行った結果、再発不安は大腸がん検査の受診(オッズ比(OR),1.15)と前立腺がんの継続的な検診受診(OR,1.15)に正の関連を示し、受診推奨年齢における乳がんの継続的な検診受診(OR、0.27)と負の関連が示された。曲線的効果を分析した結果、中程度の再発不安がある介護者は、受診推奨年齢における大腸がんの継続的な検診受診(OR、1.48)が高いことが示された。
【結論】
全体として、介護者の再発不安はがん検診の受診を特異的に促していることがわかった。がん検診以外のがん予防行動に再発不安が与える影響や再発不安がそれらの行動を促すプロセスについて明らかにする必要がある。
【コメント】
がん患者の再発不安はこれまでも研究が進められてきたが、家族の再発不安というのはまだまだ新しい領域である。「大切な家族にがんがまた戻ってくるかもしれない」という家族の再発不安は、これまで生活をずっと共にしてきた家族にとっては当然あってもおかしくないことである。しかし、その患者に対する健康の不安が、家族自らの健康を心配する行動につながるという実態が本研究で明らかになったが、その因果関係については、もっと詳細な研究を進めていく必要がある。また本研究の今後の課題として、再発不安は健康行動を促進し良い行動を生んでいるが、その再発不安は問題なのかということである。がん患者の場合、過剰な再発不安は医療機関を頻繁に受診したり、代替療法を試したりするなどの過剰な医療サービスの希求行動を示す。家族においてもがん検診という医療サービスに対する希求行動を示したが、それは病的な問題行動なのか検討していく必要がある。