Journal Club
Epidemiology of mental health problems among patients with cancer during COVID-19 pandemic (COVID-19パンデミック時のがん患者の精神的健康問題の疫学)
Yuanyuan Wang ¹ ², Zhizhou Duan ¹ ³, Zikun Ma ⁴, Yize Mao ⁴, Xiyuan Li ⁴, Amanda Wilson ², Huiying Qin ⁴, Jianjun Ou ¹, Ke Peng ¹, Fangjian Zhou ⁴ ⁵, Chaofeng Li ⁴, Zhuowei Liu ⁶ ⁷, Runsen Chen ⁸
Transl Psychiatry. 2020 Jul 31;10(1):263.
立川病院
水島仁
【背景・方法】
新型コロナウィルス(COVID-19)のパンデミックの昨今、がん診断を受けた患者のメンタル問題についての研究を行なった。本研究は中国最大のがんセンターのひとつである機関において6213人のがん患者に対する横断研究を実施した。 社会地理的因子、精神的ストレス、精神的な健康状態がアセスメントされ、電子カルテから健康状態を抽出した。
【結果】
6213名のがん患者のうち、うつ症状23.4%、 不安症状17.7%、PTSD 9.3%、敵意 13.5% を有していたことが判明した。 階層線形モデルでは精神疾患の既往歴、アルコール多飲、新型コロナウィルス蔓延の環境において、がんコントロールに対して悩む回数の多さ、精神的なプレッシャーを感じる回数の多さ、そして、疲労や疼痛の程度が強い、ということが、がん患者における精神的な問題の危険因子であることが判明した。しかしながら、彼等のなかで、カウンセリングなどの援助を求めている者はわずか1.6%にしか過ぎなかった。また、精神的な問題を軽減する防御因子についても解明した。この研究で、精神的な不調を訴える患者数は多いものの、精神的ケアを受けに行くことでCOVID-19感染リスクを上昇させうる可能性もまた彼等にとっての大きな苦痛となっていることがわかった。全てのがん患者に対して、体系的な精神状態のスクリーニングならびに、医学的な介入の確立を行うことが重要であると考えられる。
【コメント】
新型コロナウィルスによるパンデミックで、日常的な活動が制限されることで精神的不調を訴える方は多いと実臨床でも感じられる。しかし、本論文にもあるように、病院に出かけることで新型コロナウィルスに暴露するリスクに悩む方も多いだろうということは容易に想像できる。入院中に家族や友人との面会も制限されているところも多く、がん医療を受ける患者は孤独感を今まで以上に感じていることだろう。オンライン診療や、オンライン面会などを利用しながら少しでもがん患者の不安症状や抑うつ症状を緩和できる方法を速やかに検討・導入する必要があるだろう。