遺族ケアガイドライン参考資料
国内初の遺族ケアガイドラインを読み解く①(CQ1)
臨床疑問1(CQ1):
「がんなどの病気で重要な人を亡くした(18歳以上の)成人遺族が、専門的支援が必要なほどの精神的苦痛を抱えている場合、非薬物療法(薬を使わないケア)を行うことは推奨されるか?」
<解説>
がんなどの身体疾患によって、家族や大切な人(重要他者)を失った(病因死)18歳以上の成人遺族が経験する精神心理的苦痛に対する支援方法として、日々の臨床現場では薬を用いないさまざまな方法(ここでは「非薬物療法」と総称する)が行なわれています。そこで、本臨床疑問(CQ)では、非薬物療法の効果に関して、心理療法や精神療法のみに限定せず、リラクゼーションや音楽療法、アロマセラピー、運動療法などを含めて幅広く、標準的な手順に従い文献検索を行いました(文献検索は、推奨の根拠となる科学的知見を収集するために行います)。そして、遺族に対してどのような非薬物療法の効果が実証されているのか、そのエビデンスを俯瞰し、医療現場の状況に幅広く適用できる支援方法を検討しました。
文献を調べた結果、基準に該当する25件の文献が確認されました。そして、ガイドライン作成時に不可欠な「推奨の強さ」(その医療行為をどの程度強く勧めるか)と「エビデンスの強さ」(研究結果への信頼度)を判断するために、遺族にとって有益なアウトカム(変化・結果)として5つ(「抑うつ」「悲嘆」「不安のそれぞれの低減」「生活の質(QOL)の向上」「心的外傷後の成長」)と、不利益なアウトカムとして1つ(支援の途中で脱落した人の割合)について、エビデンスの評価を行いました。
基準を満たした25文献では、死別によって生じた精神心理的苦痛の強さ(重症度)には大きなばらつきがあり、介入(意図的に行う医療的な働きかけ)の内容や時期、アウトカム指標も多様でした。一方、採用された25文献のうち一部を対象に、統計的手法によるメタアナリシスを実施したところ、非薬物療法を提供することで、遺族の抑うつや悲嘆を改善させることが示されました。研究ごとに対象や指標のばらつきが多いため、さまざまな支援方法を全体でまとめて強く推奨することは難しいと考えられ、推奨の強さは2(弱い)、エビデンスの確実性はC(弱い)と結論付けられました(推奨の強さは4段階:強く推奨・弱く提案・弱くしないことを提案、強くしないことを推奨。エビデンスの確実性も4段階:A(強)~D(とても弱い))。
この検討を通して、日本国内で、遺族に対する薬物以外の支援方法を今後実装していくには、患者の死因や遺族の苦痛の強さや重症度に合わせた支援方法の検討、支援方法別の効果の違いの検証、18歳未満の遺族・遺児に対する治療・ケアの検討など多くの課題が挙げられました。また、今回の基準を満たした文献に日本で実施された研究がなく、日本特有の文化や死生観にあわせた支援方法を開発し、効果を検証していくことも課題に挙げられました。
文責:吉田三紀/釆野優



