遺族ケアガイドライン参考資料
国内初の遺族ケアガイドラインを読み解く③(第Ⅱ章 悲嘆と家族・遺族のケア)
今回は第Ⅱ章の総論1から5について解説します。
総論1では、遺族ケアに携わるうえで知っておきたい悲嘆(ひたん)の概念と理論について説明しています。愛する人の死は人生において世界共通の最もつらい経験であり、その苦しみの過程にはWorden(ウォーデン)が提唱した4つの「遺族が取り組むべき課題」があるとされています。またStroebe(ストローブ)らが提唱した「死別への対処」に関しては、大切な人を亡くした心の痛みに向き合う喪失志向の対処(亡くなった人への思いや、深い悲しみに自身が正面から向き合うことで、心の整理をしていく方法)と、新しい生活や役割に向き合う回復志向の対処の双方が大切だと書かれています。また、悲嘆のプロセスの目的は、故人を忘れることでも、悲しみを無理に抑えたり、感じなくしたりすることでもなく、亡くなった人との絆(つながり)を心の中で保ち続けることが大切であるという考え方も示されています。悲嘆が長引き、複雑性悲嘆となりやすい主要な危険因子についても紹介され、遺族の支援を検討する際、どのようなポイントに着目するかの参考にもなります。
総論2では、「通常の悲嘆」の概念やその支援方法について説明されています。遺族の約85%は、自然に収束(しゅうそく)していく「通常の悲嘆(または正常悲嘆)」の経過を辿(たど)ると言われ、これらは疾患(治療すべき状態)として扱われるべきでないとされています。すなわち、遺族支援の基本原則として、ほとんどの遺族が回復する力を持っていること、ニーズに十分配慮した効果的で思いやりのあるコミュニケーションをとること、文化や多様性に配慮した柔軟性を持つこと、が重要です。通常の悲嘆に対して、どのような時期に、どのような支援方法があるかについて、具体的に紹介されています。
総論3では、遺族とのコミュニケーションについて、多くの遺族が語る苦痛の内容(治療の後悔、記念日反応、周囲からの言葉かけ・態度)について説明されています。また、「役に立たない援助(unhelpful(アンヘルプフル) support(サポート))」についても解説されており、遺族ケアについての知識が不十分なまま行われる援助の8割が、遺族を傷つけ、辛くさせる危険性があることにも触れられています。
総論4では、ケアの対象としての患者の家族、つまり生前からの家族支援がテーマです。がんなどによる死別の場合、ある程度死期を予想できるという特徴があり、家族の予期悲嘆の扱いが重要となることや、死別前の段階でも、家族は患者と同じかそれ以上に、抑うつや不安を抱えていることが多いということに言及されています。その中で、有効性が報告されている死別前の家族ケアの海外での実践が、紹介されています。
総論5では、総論4でも扱った、家族に対する死別前からのケアについて、さらに、死別後を見据(みす)えながら、どのようにシームレスに(途切れなく円滑に続く)支援を行うかについて、解説されています。具体的には、基本的な患者と家族とのコミュニケーションの在り方や、存命中から医療者が意識すべき点、そして、死後に向けてできる準備などが、説明されています。
文責:竹内恵美/釆野優



