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第27回日本サイコオンコロジー学会総会案内(3)
第27 回日本サイコオンコロジー学会総会に向けて
小川朝生
このたび、2014 年10 月3 日(金)、4 日(土)に、東京都江戸川区のタワーホール船堀で開催いたします第27 回日本サイコオンコロジー学会総会の会長を拝命し、大変光栄に存じます。温かくご支援下さいました皆様方に深く御礼申し上げます。
今回の大会のテーマは、「サイコオンコロジー リ・イノベーション」とさせていただきました。リ・イノベーション、言いかえますと「改めて・作る、構築する」とお示しいたしました背景には、精神心理的ケアの立ち位置について、すなわち天地人の3 つの要素について一緒に考えてみたい、話し合う場にしたいと考えからです。
少し詳しくお話ししますと、
天:ケアを提供する機会を考える
地:ケアを提供する場を考える
人:ケアを提供する人を考える
ということになります。
順を追って説明を加えたいと思います。
天:ケアを提供する機会を考える
がん対策推進基本計画の「患者・家族の療養生活の質の維持・向上」が掲げられ、精神心理的ケアが進められて参りました。緩和ケア研修会を中心に、精神症状緩和の教育・研修の場が展開されてきました。
また、昨年からは「診断時からの緩和ケア」が議論されています。「診断時からの緩和ケア」には、当然苦痛の緩和も入りますが、併せて「よりよく生きる」視点も考えなければならないのではないでしょうか。具体的には、サバイバーについて、より広く考える機会を持てれば、と思います。従来、ともすれば「サバイバー=就労」と思われがちな面があります。たしかに「よりよく生きる」ことを考えるには、就労も忘れてはならないテーマです。しかし、患者・家族が生活を取り戻し、さらに自立して(病院を卒業して)進むためには、より広い視点に立って検討することが必要ですし、医療者の支援を越えたその先を考える必要もありましょう。また、再発予防など健康支援を考えることもサイコオンコロジーの役割かと考えます。
地:ケアを提供する場を考える
あわせて、是非一緒に考えていただきたいのは、ケアを提供する場、についてです。特に、今回は病院と在宅の2 つの場を再考してみたいと思います。
従来、病院において緩和ケアチームが提供するケアが話題の中心となってきました。しかし、病院内で精神心理的ケアを提供する場は、緩和ケアチームや精神科・心療内科に留まりません。精神心理的ケアは、もともと層構造をなしています。サポートグループや相談支援センターなど、より広い支援を提供する場があります。目の前の患者だけではなく、院内の、地域の全ての患者・家族に届けるために何をすべきか、を考えることも、医療者の役割ではないでしょうか。
さらに、2025 年問題が議論されるように、わが国は超高齢化社会を迎えています。新たな医療の提供体制として地域包括ケアが提唱され、在宅医療の整備が進められています。
がん医療においても、在宅医療が基本的な緩和ケアを提供する基盤となります。在宅において精神心理的ケアをどのように提供するのか、病院と在宅がどのように連携するのか、大きな課題かと考えます。
人:ケアを提供する人を考える
最後に、精神心理的ケアを提供する人についても考えなければならないと思います。より広く、深く提供するためには、多くの職種の方の協力が必要不可欠です。看護師や医療ソーシャルワーカー、薬剤師の方にも触れていただける場にしたいと思います。
さらに、医療を越えた枠組みとの連携や、伝え方の方法も考えるべき課題かもしれません。従来、患者のことを考えて、と言いつつも、ピアとの交換の場が少なかった感は否めません。
プログラムの構成についても、いくつか新しい試みに取り組みたいと考えています。まず、大幅に事例検討の枠を増やし、臨床に即した研修企画も大幅に増やします。とくに、対がん協会とがんサロンの合同企画も交渉しております。今まで取り上げる機会の少なかった患者サポートの話題から緩和ケアの症状緩和まで、親しみやすい、わかりやすい内容を心がけ充実させたいと思います。また、関連領域に向けた学会からの発信も意識し、従来の市民公開講座に代えて、この領域のステイクホルダーを集めたディスカッションの場を用意し、私たちが何をしなければいけないのか、会員のみなさまと一緒に考えたいと思います。ほかにも、基礎研究に関する自主企画等も取り入れ、「学会員の方が作る場」として充実させる工夫を一緒に取り入れたいと考えています。
経過は随時ホームページにあげて、お知らせいたします。より広く、深い心のケアのあり方を皆様と一緒に考え、作り上げたいと思います。多数の皆様のご参加を、心よりお待ちしております。