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高額療養費制度の負担上限引き上げについて
一般社団法人 日本サイコオンコロジー学会
日本の保険医療のセーフティネットである高額療養費について、高齢化や高額薬剤の普及等により総額が増加していることから、所得区分を細分化し、区分ごとの自己負担限度額を引き上げることが議論されています。
医療費負担や収入の減少による患者や家族へ悪影響(経済毒性)は、国内の知見から、①支出の増加、雇用形態の変化といった物質的毒性、②医療費についての不安、治療や治療費についての懸念といった精神的毒性、③治療費が治療の選択や継続に与える影響といった行動的毒性があることがわかっています。また、患者さんの7割、ご家族の3割に経済毒性が認められ、8割以上の患者さんと医師が治療選択時に治療費を考慮していることや、経済毒性は年齢が若く、介護者が配偶者で、所得が低い場合に多く報告されること、ご家族の気持ちのつらさや悲しみを増加させること、経済毒性への支援が十分ではないことも報告されています。(https://saqra.jp/studies/study/fog12mgzu)
一方で長年にわたり安心して医療を受けられるように支えてきた日本の公的保険制度を今後も維持していくために、相応の負担増や制度の見直しが必要であることは間違いありません。
がん患者の精神・心理面(精神腫瘍学)を専門とし、がんを取り巻く医療と科学の発展を目的とする当学会として、今回の高額療養費の負担上限引き上げについて、関係各者での十分な議論の上で慎重に審議を進められることを期待しています。